君の全てを誰よりも愛そう
俺が今、紗絵にしてやれることは安らげる場所を与えてあげることだと思うんだ。
俺はずっと、現在に興味がなかった。
将来の目標のために今を坦々と生きてきた。
将来のためになること以外、真剣になんてなれなかったんだ。
だけど、今ここにいる紗絵をどうにかしてあげたいと思う。
この子のまだ見えない暗闇を照らしてあげたいって。
照らすことが出来ないならせめて、一緒に暗闇を歩いてやりたい。
ほっとけないんだ、どうしても。
なんでかなんて分からない。
だけど一つだけ言えるとしたら・・・痛いんだ。
紗絵がずっと笑顔なのが、痛いんだよ俺には。
だけど、何も話さない。
きっと何かあるんだろう。
家に帰れない理由だって、絶対になにか事情があるのに。
紗絵は何も言わないでいっつもにっこり答えるんだ。
鍵忘れちゃったんです、って。
ずっと、そうやってきたのかって考えると俺の胸が痛むんだ。
そうやって暗闇を笑顔で隠していたのかって思うとやり切れないんだ。
だって笑顔ってそーゆーもんじゃないだろ。
楽しかったり、嬉しかったり、感動したり。
そんなときに自然とでるものだろ。
紗絵の笑顔は、俺にとっては泣き顔と変わらないような気がして。
心が血だらけのような気がして、ほっとけるわけないんだ。