君の全てを誰よりも愛そう
「あ、紗絵ちゃん。今日は事務所にいた方がいいかもしんねーぞ」
開店数分前に紗絵にそういった仁さん。
なんでだ?いつもなら寝るまで紗絵もカウンターにいたりとかするけど。
なんかあんのかな。
「ほら、ちょっと厳つい人が来る日だから。危ねーだろ?これ、事務所持ってっていいからさ」
ピッチャーになみなみと注いだピーチティーとクッキーを紗絵に差し出す仁さん。
ピーチティーが好きな紗絵はルンルンで事務所に行ったけど。
厳つい人・・?そんなんここのカフェに来たことはないよな?
訝しげに仁さんを見つめれば俺の視線に気づいたのか、仁さんが人差し指をクイクイと動かして俺を呼んだ。
「なんですか?」
「多分今日、来るぞ池谷さん」
「池谷さんが・・?」
この前仁さんが言ってたな、紗絵の中学の教師だって。
これは・・何か聞けるかもしれない。
「池谷さんいっつもカウンターに座ってるだろ?コウも今日はカウンター入っとけ。それとなく聞いてやるからよ」
紗絵のことが、何か分かるかもしれない。
「仁さん、ありがとうございます」
「いんや、俺は俺で紗絵ちゃん心配だからな」
仁さんがいてくれて助かった。