君の全てを誰よりも愛そう
「その女の子に直接話を聞くというわけにはいかないんですか?」
仁さんが少しずつ核心をつくように話を掘り下げていってくれている。
「一度ね、女性教諭がその子にそれとなく聞いたらしいんだけどニコリと笑って暴力なんてありえないですよって言われたらしいんだ」
「そうでしたか・・」
「本人が助けてと意思表示をしないことにはなかなか難しいだろう?それに本当に暴力ではないのかもしれないしね」
確かに、そうだ。
ナイーブな問題だけに調査するのも手間取るよな。
何かいい方法はないもんか。
「実は僕の妻がね、両親からDVを受けていたんだ。それで妻に言われたんだけど、ただ頭を撫でるというしぐさでも手を振り上げられてしまったらそれが恐怖に変わるんだって」
つまり、殴られるって思ってしまうってことだよな。
「まぁこんな方法生徒に試すわけにもいかないんだけどね」
そうか、そうだな。
その方法はすぐに試せるし、かなり信憑性が高いものかもしれない。
「彼女が、事を公にしたくないのなら・・そうしてあげたい。だけど彼女が傷ついていく一方ならそれは止めなくてはいけないと思うんだよ・・。結局僕ら一教師に出来ることは本当に些細なことだけだよ、情けないが」
池谷さん・・いつもカフェにきているときはただの普通のおじさんだと思ってたけど
本当は生徒想いの優しい先生だったのか。
なんか今はカッコよく見えるよ、池谷さん。