君の全てを誰よりも愛そう
「コウ、休憩入れ」
池谷さんが帰ってから休憩に入った俺は紗絵のいる事務所へと向かった。
「あ、コウくん。休憩?」
「ああ。そろそろ寝とけよ?明日も学校だろ」
時計をみればもう日付が変わろうとしている。
紗絵は机にいろんな雑誌を広げていたらしく、慌てて片づけている。
「何してたんだ?」
「あ、なんでもないよ。あはは」
あははって・・そのわりにぎこちないんじゃないの?
ってそんなことはどーでも良くて。
「宿題やったのか?」
「もう・・子供扱いしてる?ちゃんとやったもん」
「そっか」
紗絵の頭に手を伸ばし、いいこだなって頭を撫でようとした
瞬間
「ヤッ・・!!」
紗絵が頭を両手で守ってうずくまった。
「紗絵・・・やっぱり・・」
日常的な、暴力を受けているんじゃないのか?
“実は僕の妻がね、両親からDVを受けていたんだ。それで妻に言われたんだけど、ただ頭を撫でるというしぐさでも手を振り上げられてしまったらそれが恐怖に変わるんだって”
池谷さんの言葉が頭の中で何度も反復した。
「紗絵、大丈夫だ。俺はお前を殴ったりしないから・・・」
確認するためとはいえ、いざこんな紗絵を目の前にしてみたら胸が痛くなった。
それに加え、紗絵に手を出している奴に対しての怒りが・・・溢れだす。
「あ、ごめんなさい・・。違うの、別にコウくんが怖かったわけじゃなくて。コウくんが、怖いわけないのに・・失礼な態度とってごめんなさい」
「ん、分かってるよ」
怖い思いをしたのは自分のはずなのに、何故か紗絵は俺への態度が悲しかったらしい。
「泣かなくていいんだよ。ほら、おいで」
俺から近づいて怖らせるのは可愛そうだったから俺は両腕を広げて紗絵が来るのを待つことにした。
「コウくん・・・。傷ついてない?私失礼なことしたのに」
紗絵のアホ。
何を心配してんだよ。
傷ついてるのは、紗絵だろ?俺の心配じゃなくて自分の心配しろって。
「あんくらいじゃ、傷つかない。紗絵が泣いてる方が俺には辛いけど?」
「コウくん・・。うあぁぁんっ!!」
やっと俺の腕に飛び込んできた紗絵を俺はギュッと抱きしめた。
助けてやる。
助けてやるからな。
紗絵が怯えるものから・・・守ってやるから。