君の全てを誰よりも愛そう
紗絵が俺の腕の中で泣くのは今日で二度目。
前回は、夢の中でうなされて。
今回は、俺に失礼な態度をとってしまったんじゃないかっていう心配と、抱えきれなくなった思いから。
きっと紗絵は今までずっと、泣くことが出来なかったんじゃないかな。
詳しいことは何もわからないけど、紗絵の雰囲気がなんとなくいつも悲しみの色を放っているんだ。
「なぁ、紗絵。辛いなら辛いって言っていいんだぞ?」
少し落ち着いてきた紗絵の頭を撫でつつ、話しかける。
「言ったら、もっと・・辛くなるから」
今までは受け止めてくれる人がいなかったんだろうな。
それで辛いと言ってしまったら余計に辛くなる、ってのは分かる。
だけどな?
「もう一人で抱え込む必要ないんだ。辛いなら辛いって言ってくれ。そしたら俺は受け止めるから」
本心だよ、これは。
なんでこんなこと言えちゃうのか自分でもわからないけど。
これから先ずっと、俺は紗絵の元を離れないって思いだけはあって。
それがどんなカタチとしてかは分からないけど、心の底から紗絵が笑うのをみたいって思うんだ。
「コウくんは・・優しいから・・・。コウくんに甘えたら、この先コウくんがいなくなってしまったら私・・どうしたらいいか分からなくなるもん」
「紗絵が・・俺を必要じゃなくなるまでずっと傍にいるから。だから、紗絵も俺を頼れ。泣いたっていいんだ、迷惑かけたっていいんだ。紗絵が一人で気持ちを抱え込んでしまうことの方が、俺には辛いぞ?」
紗絵の頭を撫でていた手を頬までもっていき、頬に触れた。
泣いたせいで顔中真っ赤で。
なんだかちょっと子供っぽくて。
そんな紗絵が愛らしくてたまらない。