君の全てを誰よりも愛そう
「今日は俺んちに帰ろうか」
「え、でもまだ・・」
「ちょっと仁さんとこ行ってくるから」
このまま紗絵を放って仕事に戻れる気がしないし。
今日、この日のうちに紗絵の話をきいてしまいたい。
少しでも心の重荷をおろさせてあげたかった。
「仁さん・・・すいません!今日はこれで上がらせてもらってもいいですか?」
仁さんにこれでもかというくらいに頭を下げて、早退をお願いした。
「ん、いいぞ。普段真面目だからなコウは」
高校の頃から遅刻も早退も欠勤もしたことのないバイトを、この日はじめて早退した。
急なお願いにも関わらず受け入れてくれた仁さんに本当感謝だ。
「紗絵の荷物は俺が持つから、紗絵はこれ持ってくんない?」
「左手?」
「そ!よろしく」
「うん・・・」
紗絵の手を引いて、ゆっくりと夜道を歩いた。
紗絵の手、ちっさいな。
この小さな手を、これからも引いていける存在でありたい。