君の全てを誰よりも愛そう
ぼっーっと一点を見つめる女の子。
夜闇に紛れているせいか、瞳の奥が真っ暗に見えた。
「君、どうしたの?」
「えっ・・・」
俺が声をかけて初めて女の子は俺に気づいたらしく、肩をビクつかせた。
よくよく制服を見てみれば、ここらへんにある市立の中学の制服だ。
中学生の女の子が制服を着たままこんな時間にこんなところで・・?
「あ、すいません!邪魔ですね、あったかかったからつい・・」
えへへと笑う女の子。
まぁ、たしかにここは外だけど簡易的な屋根もあるし風も防げる場所だし。
人通りも少ない建物と建物の間、居座るには丁度良かったのか?
って、そうじゃないか。
「あ、いや。邪魔だから声かけたってわけじゃないんだけど。君こんな時間に大丈夫なの?」
普通の大人ならそこが気になるわけで。
単純な疑問を女の子へと向けた。
でもその子はニコリと笑い、言葉を発する。
「鍵、忘れちゃったんです。今日家に親がいない日だからどうしようかと・・」
ニコリと完璧な笑顔の女の子。
それに感じる違和感。
彼女の瞳の奥の闇が深まった気がした。