腹黒王子様とお見合いした結果

妻が大事とか。

簡単に言わないでよ。

みんな誤解しちゃうよ。

陸人さんだって。

私も。


「すぐに済むから待っててもらうよう伝えてくれ」

「分かりました」



エレベーターに乗り込むと、やっと手を放してくれた。

掴まれた腕がひりひりと痛む。


私は陸人さんを見ることができず、床をじっと見つめていた。


「どうして来た?」


低い、陸人さんの声がエレベーターに響く。


怒ってる、よね。やっぱり。


「ごめんな、さい」


「いや、俺は何でお前が此処に来たのか聞いてんだけど?」


「ごめんなさい」

「だから!!」


イライラさせてる。
やっぱりここに来るべきじゃなかった。


「私はもういりませんか?」


怖いけど、気がついたら言葉が出た。


一番聞きたくないこと。だけどきっと陸人さんは望んでいると思うこと。


「お前はバカだな」


< 199 / 206 >

この作品をシェア

pagetop