嘘つき少女は君を愛せなかった
「あんたさあ・・・、

なんでそんなに夏目敵に回すわけ?」


屋上。気持ちの良い、初夏の風があたりに吹く。

「・・・嫌いだから。」

「はい?」

よく聞こえないんだけど。

私が聞き返すと、辰巳はいらっとした顔で

「嫌いだから!!!」と叫んだ。

そりゃあ、すきだったら敵に回さんわ。

「そうじゃなくて、嫌いになった理由を聞いてんの。」

その質問にはなかなか答えてくれない。

「うーん」とか「えーと」とか濁してばかりだ。

「辰巳・・・?」

私はどすの効いた声とともに、右の拳を見せた。

明らかに「コイツやべえ」という顔で

辰巳は渋々話し始めた。

「梨花子が中学の時、梨花子のやつそいつに告ったんだ。

学校はバラバラだったけど部活が一緒だったらしくて。」

梨花子ちゃんが・・・?

「そしたらあいつ、

知らねえ普通のやつには興味ないから、

もう来んなって・・・。

そんな言い方ないだろ!?」

辰巳は悔しそうにコンクリートの床を拳でゴンと叩いた。

・・・そのとき、梨花子ちゃんはどんな気持ちだったのかな。

胸が痛んだ。

「もう、梨花子、男なんて信用できねえってよ。」

地味に手を痛がっている姿を、鼻でふっと笑った。

全く耳の痛い話だ。

「つまり、

夏目は梨花子ちゃんのことは

好きではなかったってことでしょ?そもそも、

他校のやつに告られてホイホイ認めたりしないと思うな。

いきなり告った里佳子ちゃんも一割くらい悪いと思う。」

「一割て・・・」

辰巳は呆れたようにため息をついた。

___その時だった。

「岡山くん・・・。やっぱり、ルイちゃんのこと好きなん

だよね。」

誰の耳にも届かないくらい小さくて華奢な声だった。
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