嘘つき少女は君を愛せなかった
私の横では辰巳が「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」と呪文のように繰り返してた。

視線は自分の足元へ・・・。

聞こえてるぞ、おい。

でも、いいすぎたかな・・・

「嘘だ」と口を開こうとする。が---
櫻井さんがひと足早かった。

「矢崎さん、ごめんなさいっ。これからは気を付けま・・・るね。」

ドクン

ココロが痛い。

なんで謝るの。

なんで、なんで・・・

謝れるの・・・

私がバッと立ち上がると、

今度は辰巳が「ひいいい」とよろけた。

「帰る。」

「は、ちょい嘘だろ。ルイ!!」

「来んな!」

さっと走って屋上を出る。

苦しい、哀しい?切ない、辛い・・・?

階段を下りたところで後ろを振り返る。

「・・・来るはずないよね。」

上で辰巳はなにをしてるんだろう。

私を怒ってる?私にびっくりしてる?

それとも櫻井さんのこと・・・

そこまで考えて私は気づく。

苦しくもなくて、悲しくもなくて、

切なくもなくて、辛くもなくて・・・

「寂しんだ。」

涙が溢れそうになって咄嗟に空き教室に入る。

聞いて欲しい。

本音を。誰かに・・・

その時----

ふっとやさしく包まれた。

後ろから抱きつかれた。

知ってる、この温もり。
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