時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
放課後になるとクラスメイトは
一斉に部活の準備を始めた。
澪衣は吹奏楽部で
フルートを吹いている。
美しい音色と清楚な演奏姿に
誰もが魅了される。
私は、ガーデニング部。
地味で、人気がないけど
花を育てるのが大好きな私は
とても憧れて入部した。
半年経った今は
中庭の花壇を担当している。
ベコニアとゼラニウムの
寄せ植えが咲き揃って綺麗だ。
「花、好きなの?」
『え!?…嘩純くん!?
う、うん、大好き!』
不意に声を掛けられ
驚いた。
「いつも、幸せそうな顔で
世話してるもんな」
『そうかな!?
小さい頃から
花を育てるのが大好きで…」
「月ノ瀬らしいな」
もう11月だというのに
嘩純くんは、額に汗をかき
肩まで袖をまくっていた。
『嘩純くん、部活は?』
「ああ、ボールが
外に出ちゃって!」
そう言うと
後手に持っていたバレーボールを
私に差し出して見せた。
聞いてみたら…?
澪衣の言葉が、頭に浮かんだ。
……聞いて……みようかな…?
『……嘩純くんは…あの…
どこが好きなの?』
「ん?どこが!?
俺は中学からやってるから!」
…ん?…中学?
はっ!?
バレーボールの話になってる!?
「じゃ、戻るよ!!」
『あ!うん!
頑張って、嘩純くん!』
「おー!!」
そう言って
ボールを持った手を高々と挙げると
嘩純くんは体育館へ戻って行った。