時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
『綺麗だなあ、お月様』
11月に入ると
急に空気が冷たくなり
ひんやりとした夜風が
首筋を掠めて行った。
私は、高めに束ねた髪をほどき
ハラリと降りてきた長い髪を
首筋に絡ませると
早足で家路を急いだ。
『寒っ…早く帰ろっ!』
見慣れた町並み
いつもの帰り道
いつもの曲がり角
いつもと変わらない日
の、はずだった…のに…
私の目の前に
突然、彼は現れた。
ロシアンブルーの瞳を持つ
神秘的な人。
色とりどりの光を纏い
胸元にはオーロラ色のペンダントが
輝いていた。
綺麗……
そう思った瞬間
彼の腕の中に包み込まれた。
「……やっと見つけた…やっと…」