時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
♪…♪… ♪♪.. .♪…♪ …♪♪
…朝だ。
『輝夜、おはよう』
「うん、おはよう」
サラサラの長い前髪を
無造作にかきあげる輝夜。
『着替えるから、向こう向いて』
「……………」
『……輝夜?』
「今日は…見てたい…」
唐突にそう言われ、驚いた。
『み、み、見てたい!?って?!』
「確かめたいんだ」
悪戯で言っているんじゃないと
輝夜の真剣な目を見て分かった。
『………うん…』
躊躇いながら上着を脱ぐと
輝夜は、背後に立ち
そっと肩に手をかけてきた。
肩にかかった手が
僅かに震えているのを感じた。
『………輝夜?』
「………愛舞
これ……どうしたの?」
そう言って、輝夜は
肩甲骨から20cm程下まで伸びる
白いアザを指でなぞった。
『そのアザ…
両側に同じようにあるの』
『生まれつきだって
お母さんが言ったてた』
「そうなんだね…」
輝夜は、そのアザを
愛しげに両手でなぞった。
「…愛舞…ありがとう
怖かったろ?」
『…ううん
信じてるから怖くない』
『…でも…恥ずかしい!』
「ごめん…でも…
愛舞は、すごく綺麗だよ」
『…いやっ!?…あ…ありがとう』
何を確かめたかったのか
聞けなかった。
ただ…
震える輝夜が
とても愛おしく思えた。
月の精霊が、何故
私に逢いに来たんだろう。
不思議なことばかりなのに
それを受け入れる私がいた。