時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
放課後、いつものように
ガーデニングセットを持って
中庭へ向かう途中
右耳の辺りに
微かに気配を感じた。
何だろう……この音…
聞き覚えのある……
そう、小さな小さな鈴の音。
ええっ!?フェアリー!?
どうしよう?
家から飛んで来たのかな。
『ひ、一人で来たの?
他の皆んなは?』
そっと、声を掛けてみた。
それでも、フェアリーは
透き通った淡いピンク色の羽を
小刻みに羽ばたかせ
微笑むばかり。
『言葉が、話せないの?』
『そうなのね?』
両手に収まる程の
小さな小さなそのフェアリーは
シャイニーカラーの柔らかい髪を
スズランの花のような髪飾りで
留めている。
グリーンの瞳をキラキラ輝かせ
嬉しそうに羽ばたく姿は
ほんとに無邪気で、可愛い。
私が両手を差し出すと
その中に舞い降りてきた。
『一緒に、お花のお世話を
してくれる?』
そう声を掛けると
フェアリーは私の手の中で
嬉しそうにクルクルと回った。