時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
下校時間が過ぎ
静まり返ったグランド。
僅かに残った照明を頼りに
中庭へ向かうと
……花壇に…人影!?
必死で目を凝らすと
ユニホーム姿の二人の女子が
ぼんやりと見えた。
そのうちの一人が
花壇を蹴るような仕草をした。
『…や…やめっ!!』
私がそう叫ぶと同時に
澪衣が、物凄い勢いで
彼女達の前に駆け出た。
「あなた達、どういうつもり?」
「こんな時間にコソコソと
最低ね」
こんな怖い顔の澪衣を見たのは
初めてだった。
常に理性的で冷静な澪衣からは
想像もつかない行動だった。
「最近、その女
調子に乗ってるから!」
「嘩純くんと
仲良くしてんじゃねーよ!」
嘩純くんのことで…
そうだったんだ。
「気に入らないなら
面と向かってそう言えば?」
「まあ、愛舞を傷つけたら
私が許さないけど」
「この花は、愛舞が
愛情いっぱいに育てたのよ」
「二度と触らないで!!」
二人の女子が、無言で去ると
澪衣は優しい顔に戻った。
『…澪衣…ごめんね』
「何言ってんの!
さっ、お花に水をあげよう?」
『うん!』
澪衣の気持ちが嬉しくて
また涙が溢れてきた。
「うー、ヨシヨシ
お花が元気になるように
一緒に祈ろうね?」
『…うん…うん…ありがとう』
澪衣と私が花に水をあげると
残っていたフェアリーの鱗粉が
水滴と合わさって
より一層、キラキラと輝いた。