時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
「やっと逢えたから
少しこのままでいたい…」
「……愛舞」
えっ?……今…
愛舞って呼んだ?
『あの…私の名前、知ってるんですか?』
「…知ってるよ」
…どうして?
どうしてこの人は
私のことを知ってるの?
いつもの帰り道
いつもの曲がり角
いつもと変わらない日
の、はずだった…のに…
運命の悪戯のせいで
その日は、特別な日になった。
「帰ろうか?」
彼は、そう言うと
抱きしめていた腕を緩め
スッと私の左手を握った。
そして、誘導するように
ゆっくりと歩き始めた。
繋いだ大きな手
どこの誰かも分からないのに
嫌じゃない。
不思議な夢を
見ているみたいだった。