時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
お月様はもう
随分高いところまで
登っていた。
こちらを振り向くこともなく
彼は、歩き続けた。
冷たい夜風に吹かれて
透き通るような金色の髪が
サラサラと流れ
長い前髪の隙間から
ロシアンブルーの瞳が覗いた。
色白というよりも
蒼白とも思える、皮膚色。
月の光は
色とりどりの光の粒のように
キラキラと輝き
彼のシルエットを
映し出していた。
『……妖精…?』
思わず、そんな言葉が
口からこぼれ出た。
まるで妖精のように
彼は神秘的で綺麗だった。
「…何?」
『……はっ!』
「……ん?」
『…あの、綺麗な人だなって…思って』
彼はクスッと鼻で笑った。