時空(とき)を越えて KA GU YA【前編】
もっと
彼のことを知りたい
もっと
彼のことを見てたい
そう思った。
だけど、次の角を曲がれば
家はもう直ぐだった。
このまま、この不思議な夜は
終わってしまうのかな。
『……家、ここです』
彼は、立ち止まった。
『送って頂いて
ありがとうございました』
「ううん」
そう言うと、彼は
繋いだ右手をそっと緩め
その手を肩に回すと
私を引き寄せた。
緊張で、肩が震えた。
「…愛舞?…震えてるの?」
彼は、私の頬を両手で包むと
前髪に唇を寄せ
優しくキスをした。
「ほら、寒いから家に入って」
そう言って視線を反らすと
数秒間、考え込むように沈黙し
「じゃあ…俺は
窓から入るから」
と、続けた。
『え?……ど…どう言うこと!?」