櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ








時はあっという間に過ぎていく。



今日も、ほら。



気づけば空に闇が広がり、



眩い星屑たちが我先にと自らの存在を主張し始める。




「......美しいわ。ねえ、シェイラもそう思うでしょ?」


「...そうだね」



王宮のある一室。



大きすぎるくらいのバルコニーに立ち、夜空を見上げる二人の影。



肩を寄せあうその姿はとても中睦まじい。



「君は、夜が好きなのか?」



シェイラは不意に、隣で空を見上げるアネルマに問う。



二人で夜を過ごす時は決まって、一度も欠かすことなく夜の空を見つめているからだ。



「...好きというか...美しいと、思わない?この宝石たちが散りばめられた闇夜は、他の何とも変え難いほどに美しいと」



フィンス家は王族のなかでも唯一、闇の魔力を扱う一族だ。



だからこそ、無意識のうちに闇に魅了されるのかもしれない。



闇に魅入られ、闇に恋した一族。



それがフィンステルニス家なのだ。



ふと、アネルマがシェイラの方を振り向く。



真っ赤なルージュに彩られた口元が妖艶に弧を描く。



「でもまあ、好きと言えば好きかも
だって、」





夜の光は、

女の子を普段よりずっと綺麗に、そして...大胆にさせてくれるから





月光の真下



触れ合った唇がゆっくりと離れる。



長い睫毛に縁どられた大きな瞳がすっと細められ、アネルマは意地悪そうに微笑んだ。



< 100 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop