櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
夜とは思えないほど明るい月光が降り注ぐ中
二人は肌を重ねる。
頬を紅潮させ呼吸を乱すアネルマに、シェイラは何度も口づけを落とす。
唇から、首筋を辿り、鎖骨をなぞる。
普段の真っ黒な衣装に反し、夜の彼女は、月の力も借りて一際肌を白く輝かせる。
その滑らかな上をたどるシェイラの手。
繰り返される愛撫に、アネルマはもう限界と言うように声を上げる。
力が抜け、くたりと横たわる彼女の唇に最後のキスを落とし、その日の情事は終わった。
「ねえ、シェイラ」
「ん?」
キングサイズのベットの上でゆったりと寝転んでいると、アネルマが不満そうに頬を膨らませていた。
「どうして、最後までしてくれないの?」
突然の発言に、何の事を言っているのか分からず、キョトンとするシェイラ。
しかしすぐにその意味を理解する。
「私は最後までして欲しいのに......シェイラはいつも、私をいかせてそれで終わり。私ってそんなに魅力ないかしら」
ようするに、
シェイラとアネルマが夜を共に過ごす時、肌を重ね口づけを交わすことはあっても、シェイラはけしてその先に進もうとしない。
その事を彼女は不満に思っているという事らしい。
シェイラは目を丸くする。
普段の、自信に満ち溢れた強気な彼女からは想像つかないほど、らしくもなく不安そうな表情だったから。
「好きな人との交わりを望んでない女なんていないわ。私はとっくに覚悟できてるのに...ねえ、本当に私のこと好き?他の誰かのこと考えてない?」
戸惑うように揺れる彼女の瞳は、恋する乙女のそれだった。