櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
その話からは深い信頼が垣間見える。
だが
『お前の考えはわかった。だが、俺にはそれが、正論で無理矢理塗り固められた言い訳のように聞こえる。どうしてだろうな?』
その信頼があれば、あそこまでやる必要はなかった
血縁関係はないことを
彼女に対する秘めた想いを
伝える必要なんてなかったのではないか。
その言葉は至極全うで、ジンノは顔を上げることもせずに、小さな声で「そうだな」と答えるだけ。
それでもジンノが振り返らない。
自分がやったことを後悔したって、未来は変わらないから。
宿の外に待たせたノアに、マントを翻しながら跨る。
『ジンノ...』
『俺は行く。ルミアを、頼む』
その言葉を合図に、白い肢体をしならせ、ジンノを乗せたノアは走り出す。
去っていく彼の背中に、イーリスは苦しげな呟きを。
『お前は間違ってるよ、ジンノ......でも、俺がお前でもそうした』
だから振り返るな
絶対に間違えない人間なんていない。
間違いの上に立って、それでもなお、正しさに向かってまっすぐ進め。
それが間違いじゃなかったと思える日が
いつかきっと来る
その日まで―――――