櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
ベットの上ではルミアが呆けた表情でリュカたちを見つめていた。
「...二人とも、何やってんの?」
と、状況を全く理解していない発言をかますほど。
ポカンとした表情の彼女にリュカやイーリスは、呆れ顔で肩を落とす。
「っんとに...ルミ!!無事なら無事って言え!!あと部屋に引きこもるなっ心配するだろうがっ!!」
「...ご、ごめんなさい...」
予想外に本気で責め立てられ、ルミアはしゅんとしょげる。
その姿はまるで子犬が叱られたようで、反省しているのだが物凄く可愛らしい。
垂れた耳が目に見えるようだ。
そんな姿が見えはしないリュカは、ベット脇に立つローグを押しのけ、ルミアの元へ。
「わっ...!」
そのままキョトン顔のルミアを抱きしめる。
「ほんとに...心配させないでくれ、頼むから...」
その声は切実で、苦しげに歪んだ表情を目にしたルミアは、ばつが悪そうに「ごめんね」と言った。
◇
「今まで寝てた??二日間ずっと?」
「うん...目を覚ましたらそこに、えっと...」
「ローグです」
「そう、ローグさん。彼女がそこに居たの」
誤解が解け、全員が一息つくと話が始まった。
ルミアが言うにはどうやら、ジンノと別れたあの日に意識を手放して以来目覚めることはなく、今日になってやっと深い眠りから覚めたという。
その間、ルミアはずっと夢の中に居て、外からかけらるイーリスたちの声は一切聞こえなかったと。
「ジンノ様が魔法をかけてらしたのね。私が来なければ恐らく延々と眠り続けていたでしょう」
何故だか自然と溶け込んで考察をしているローグ。
「...ちょっと何さりげなく馴染んでんの、まず自分の説明しなよ」
眉間にしわを寄せ、リュカが睨み付けるようにしてローグを威嚇する。
まあ、無理もない。ほぼ見ず知らずの相手なのだから。
特にリュカは人一倍他人に対する警戒心が強い。視力がないせいで相手の人となりが分からないというのも大きいだろう。
だからこそ素性の知れぬ相手が傍にいることに、ピリピリとイラついてしまうのだ。
はあ、と面倒臭そうに溜息をつくとローグは静かに口を開いた。
「...先ほども言ったはず。私はクダン家の者、ローグです」