櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
────
場所は変わり、ラヴェンデル地区
「何なんだ、これは......」
そこにたどり着いた衛兵たちは目を丸くした。
ラヴェンデル地区は大正門に面した王都の玄関口。
爆発されたのは正門のようだった。
その場所には 爆炎と土煙の前に胡坐で座り込む人が一人いるだけ。
その顔には不気味な笑みを描くピエロの仮面が。
「いやぁ...流石にフェルダンの大正門となると爆撃ぐらいじゃびくともしないなあ。かと言って結界が張ってあるからやつらじゃ入れないし...まったくこんなに強靭につくるんじゃなかったよ」
独り言なのか髪をかきながらぶつぶつと喋っていた。
「お前、何者だ!!」
「ん?」
衛兵の叫びにピエロの男は顔をあげる。
「おお、遅かったねえ」
そして立ち上がると、うーーんと背伸びをする。
ポキポキと首を鳴らして髪をかき上げて、
「さて、始めるか」と呟いた。
「今日が何の日か、分かるか?」
突然の問に衛兵たちはぽかんとする。
「空を見上げてごらん」
見上げる空は、星はあれどもいつも国を照らす大きな月はない。
「今日は朔夜。夜を照らす月が消え、闇が最も深くなる時間...そしてこの闇は深くなれば深くなるほどに我々闇の魔法使いの力を強くする」
ピエロの男はまるでそこが劇の舞台上であるかのように、両手を広げて笑う。
「さあ!!フェルダンを闇が包む、悪夢の夜の始まりだ!!!」
〈ダーク〉アンター・イルディッシュ
次の瞬間、そこに闇が広がった。