櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
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再び場所は変わり、教会内
「グロル...貴様何をした」
にんまりと笑うグロルに対し、国王シルベスターは睨みながら、そう責め立てる。
「私はここにいるじゃないか。何もしていない。見て分からないのか?」
「だまれ。毎度毎度同じように行くと思うなよ」
そう言うと、グロルは大きな声で笑った。
「あははは!だったらどうすると!?証拠も何もありはしない!私はここに居るのだから!」
確かにその通り。
おそらくこれまでの王族の暗殺事件は全てこのグロルのしわざだ。
状況証拠はいくつもそろっている。
それでも奴が捕まらないのは決定的な証拠が何もないからだ。
つまりグロルは裏で操るだけで実行犯は別につくる。
そうやってのらりくらりと捜査網を抜け、グロルは今現在ここにいる。
だが、今回シルベスターも考えがあってここに居た。
「...お前の目的は、この国の乗っ取りだろう」
「まあ、否定はしない」
「だったら邪魔になるのは俺とシェイラだ。お前らは必ず俺達を排除しにかかる...シェイラに関してはもう排除したも同然かもしれないが」
グロルと共にいるアネルマに腕を絡められているセレシェイラ。
その瞳はぼんやりとしていて、この騒ぎにも全く反応していない。シルベスターの声も聞こえていないのかもしれない。
アネルマの得意とする魔法は人を洗脳し操る魔法。
すっかり感情を失った顔のシェイラの腕にアネルマは恍惚とした表情で頬を擦りつけた。
「彼はもう私のものよ。身も心も私のもの」
うっとりと自分の指に光る指輪を見つめる。
(ごめんな......お前は必死に俺を守ろうとしてくれたのに。俺がお前に頼りすぎたばっかりにこんな事になってしまった)
シェイラは、国を、兄であるシルベスターを守ろうとした。
結果的に、相手側に堕ちてしまったが、それでもその守りたいと思う心はシルベスターに力をくれる。
「シェイラは失った。だが、だからこそ俺がここにいる。お前がこれだけ動き出したんだ。私の命でも狙うつもりなのだろう?
だったら今狙うといい」
シルベスターの言葉にグロルは怪訝そうに眉を顰めた。