櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
カラーン――――
無機質な高い音と主に、『石』が地面に落ちる。
そして
バリィンッ!!
音を立ててそれが壊された。
ネロの手にする、漆黒の三叉槍(さんさそう)『トリシューラ』によって―――
それはネロがグロル達を裏切った証。
彼の決意の表れだった。
「ネロッ!?貴方...!!!!」
「貴様ッ!!!」
グロルとアネルマはネロの裏切りに驚きの声を上げる。
対して、『石』を壊した張本人ネロは晴れやかに笑い、ジンノは一発その頭を叩く。
「色々遅いんだよ、馬鹿が。心配かけんな」
「すいません」
拳骨を食らってはにかむネロ。
「ネローーー!!」
声がした方に視線を移すと眠るシルベスターの隣で、仁王立ちのまま怒ってるんだか泣いてるんだか訳が分からない表情のアポロが叫んでいた。
「アホ!バカ!後で滅茶苦茶怒るからなっ!覚えとけよっ馬鹿!」
「ははっ...ありがと、アポロ」
ネロは、それはそれは嬉しそうに笑った。
「ネロ!!!貴様分かっているのか!母親がどうなってもいいというのだな!」
グロルの怒鳴り声がネロ達の和やかな雰囲気をぶち壊す。
振り返るネロの目は先ほどには見られなかった力が宿り、グロルを強く睨んでいた。
「...母は今でもあんたを愛していた、だからもしお前の中に母に対する気持ちが残っていればと思っていたが、やはり甘い考えだったようだ」
「状況が分かっていないらしい、その大事な母の命を握っているのは私だぞ」
グロルがそう言うと、ネロはふっと鼻で笑う。
「状況が分かっていないのはお前の方だ、俺の母はお前の手中には居ない。ある人の元で静かに暮らしている」
その言葉に再び驚きの表情を浮かべた。