櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ




 ジンノが呆れたようにため息をつく。



「本当に何も知らないんだな...だったら教えてやろう
 お前たち...いや、俺達はある男の手のひらでいいように転がされてるだけ。初めから、お前たちの計画など成功するはずがなかったんだ」





 その男は



 自ら敵の陣地に潜り込み



 彼らの計画を滞りなく進めさせる一方で



 ネロの母を救い



 犠牲となる人が最小限で済むように一部の人を国から逃がした



 そして魔王さえも言葉巧みに操る



 彼がジンノに話を持ち掛けたのはこの事件が起こるずっと前



 ルミアの特殊部隊への入隊試験が行われるよりも前だった



『取引をしよう』



 唐突に切り出されたそれはジンノにとっては思いがけないものだった。



『俺は“最も大事なもの”を手放す



 その代わり、お前はそれを、何が何でも守ってみせろ』



 彼の言う“最も大切なもの”



 それはジンノにとっても同じで



 断る理由など存在しなかった



 結局、



 国がどうなろうが関係なかったジンノでもルミアにとって大事なものは無視できず



 のこのこ国に戻って来て、こうやって守っている



 これもまたあいつの思い通りなのかと



 今になって思う。



 


 そう



 全ては



 黄金の瞳のあの男の思うがままなのだと




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