櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
「陛下たちはこの後も?」
「もちろん」
午後からはルミアの入隊試験が待っている。
特殊部隊の入隊試験というだけで一般入試の数倍見もの。
観客もどっと増える。
しかし今回は話が違う。
「お嬢が受けるんだろう?楽しみだなあ!!」
リーベルがさっきまでと打って変わり楽しそうに豪快に笑う。
だが、それよりもアルマには気になることが。
「お嬢?ルミアさんの事ですか?」
「ああそうだが」
「知り合いなんですか?」
「おう、お嬢の子供のころしか知らんがな。成長した姿を見るのは今回が初めてだ」
シルベスターもこの事実には驚いたようで、目を丸くする。
「どうしてお前が知ってるんだ?ジンノもまだ入隊していないころだろう?接点がないじゃないか」
まさにそのとおり。
彼とルミアのどこに接点があるというのか。
そう尋ねると、リーベルがニヤリと笑う。
「陛下はご存じないですか
十年以上前に、当時の特殊部隊に喧嘩を売った馬鹿なガキがいたこと」
シルベスターが記憶の中を探る。
十年以上前となると、まだ彼も幼い。
「...ああ。そういえばそんなことがあったかな」
しばらく考え込んでいると、ふとそんな噂が王宮に流れたことがあったこと思い出す。
当時の特殊部隊も強さは相変わらずで、喧嘩を売るようなバカはいなかった。
「あれね、ジンノなんですよ。ケンカ売ったガキ」
「「......ええ!?」」
イーベルの予想外の言葉にシルベスターとアルマは声をそろえて驚いた。
「あの頃はアイツ十歳ぐらいじゃないか?馬鹿だよなー」
げらげら笑うリーベル。
だが、すぐにその顔が懐かしさにほころぶ。
「でも凄かったんだよ、まだガキだってなめてかかった俺たちはことことぐやられたね
アイツの化け物並の強さはこの時から健在だったわけだ」
思い出せばきりがない。
ケンカの理由はリーベルには定かじゃないが、まだ幼かった彼は特殊部隊の屯う闘技場に乗り込んできた。
闘技場内にはリーベルやアイゼン、そしてその時候補生だったアポロとネロを含めた八人程の騎士がいた。
その中をジンノは闊歩し、一人の男の胸ぐらをつかんで殴り飛ばしたのだ。