櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
「ん...」
「あっ国王陛下!目が覚めたんですね」
眠っていたシルベスターが意識を取り戻す。
アポロの支えを受けてゆっくりと起き上がるとゆっくりと辺りを見回した。
そして気が付く。
グロルの劣勢に。
「グロル...」
「...ふん生きてたか、死んでりゃよかったものの。貴様の弟のせいで全部おじゃんだ...笑いたければ笑うといい」
シルベスターは悲痛そうに顔を歪める。
シルベスターとグロル
二人が初めて出会ったのは、魔法学校だった。
『始めまして!!君がグロル?これからよろしく!』
『ありがたきお言葉、身に余る光栄にございますシルベスター殿下』
『やめてよそんな堅苦しくしないでいいから!名前も呼び捨てでさ!仲良くしてくれよ』
『......?は、はい』
幼い頃からどちらも王族の子として生まれ育てられたた為に互いの存在は知っていたが、顔を合わせたのはその時が初めてだった。
貴族王族の世界では物心ついたころから上下関係を叩き込まれる。
当然、純粋な王家の人間であるシルベスターに対して分家の人間であるグロルが敬意を払うのが当たり前。
だが敬意を払う当の本人が、顔を合わせた当初からこんな軽い感じで。
フェルダン王家の長男と聞いていたグロルは初っ端から気がそがれたのだった。
それ以来交わす言葉は少ないながらも互いに良き友として学校生活を過ごした。
当時から無口だったグロルに対し、シルベスターは笑顔の絶えない誰からも好かれる人の良さを持っていて
二人が仲がいいのが不思議なくらい。
二人で会話するときも、シルベスターが一方的に話しグロルはそれをただ聞いて時々相槌を打つ。
だがシルベスターは知っていた。
グロルが本当は心の中に熱い思いを抱いていることを。
一度だけ、国の将来の話をしたとき、グロルは眼の色を変えて話に乗ってきたことがあった。
その内容は政治、経済と多岐にわたり、興奮冷めやらない様子で話し込むグロルを呆然と見ていたことを今でも鮮明によく覚えている。
それからというもの、会えば二人で国の事を話した、
こういうことをしたい、こういう国にしていきたい
そんなことを話しているときのグロルの目はキラキラとしていて、シルベスターはその時のグロルが大好きだった。