櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ




 ようやくすべてが終わる。



 そう思ったとき。



「.........なぃ......」



「え、」



 かすかに聞こえた掠れ声にアポロがピクリと反応する。



 その視線の先には両手で顔を覆い、座り込むアネルマが。



「...許さ...ない...っ...許さないッ!!!」



 徐々に大きくなっていく恨みのこもったその声は震えていて、最後にひときわ大きく怒鳴るように叫ぶと。泣き濡れた顔を上げた。



 ぎっと睨み付ける獣のようなその瞳。



ぎりぎりと歯は食いしばられていて、美しい顔は醜く歪んでいる。



「あんた達、全員ッ......許さないっ、!!」





〈ダーク〉デス・カース





アネルマはその呪文をどこからかとりだしたナイフ浴びせ、それをシルベスターへと投げつけた。



「避けろ!!そいつは死の呪詛だ!!」



ジンノが気が付き、慌てて叫ぶがもう遅い。



一度グロルにより魔力を抜かれ、倒れていたシルベスターにそれだけの力は残っていなかった。



「チッ......くそ!」



ジンノが瞬時に魔法をかけようとするが、それも間に合わない。



やられる



シルベスターもそう感じ、ぎゅっと目をつむる。



が、



何時まで経っても痛みを感じなかった。



その代わりに何かがのしかかる。



異様な重さに耐えかね、シルベスターは後ろに倒れ込んだ。



そして恐る恐るまぶたを開けると、そこには



自分かばい、死の呪詛がかけられたナイフを背中に受けた、グロルがいた。




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