櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
「ルミッ...頼む死なないで...!!」
死の淵に立ちながら、ぎりぎりのところで何とか息をしているルミア。
そんな彼女にシェイラは必死に治癒を続けるが、白い体を染める赤い血は止まらない。
その痛々しい姿に、シェイラの顔は真っ青で治癒を続ける手はガタガタと震えるばかり。
(馬鹿じゃないの...自分で招いた結果のくせに...)
シェイラが『やめろ』と言わなければ
ルミアがその声に律儀に答えなければ
こんなことにはならなかった。
こんな苦しむことには。
その光景が
その、情けなくみっともないけれど美しい愛の溢れた姿が
無性にアネルマをイラつかせる。
「......そんなに一緒にいたきゃ、あんたも死なせてやるわよ」
ナイフを握る手に力がこもる。
間違ってでも愛した男を、自分の手で殺すことになるなんて。
アネルマは自嘲的にほほ笑み、その手を振り下ろそうとした
だが
その瞬間
ルミアの目が、カッと見開かれる。
そして
教会は爆音とともに、業火に包まれた。
――――
ドオオォーーーン
「おいおい、何だこの爆発!?」
「......教会からだわ、ジンノさん無事かしら...」
王宮前で冥界の扉を閉じるための術式をつくっていたリンドヴルムとシュネシファーは驚いて顔を上げる。
今しがた冥界の扉は二人の力で閉じられた。
王宮前には術式の為の、陣と五芒星が大きく描かれている。
その中心に向かい合う様に座り込み、二人は自分たちの持つ魔力を最大限に使って魔法を完成させたのだった。
もう王都の地面は闇に包まれてはいない。
あとは残っている冥界の使者たちを一つ残らず殲滅するだけ。
それももう終わりを迎えようとしている。
そんな時の出来事。
教会から上がる爆音と、業火。
王都に散らばる特殊部隊の騎士達は一斉にそれを見上げた。
そして思う
あれは誰の『炎』か、と