櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ




 でも、



 いくら過去を振り返ったって、今は何も変わらない。



 手の中の温度がそれを訴える。



 受け入れたくない現実を突きつけるのだ。



 



(もう...時間が来る)



 シェイラはそう感じると、眠るルミアの顔を改めてのぞき込んだ。



 もうすぐ死ぬ



 そんな彼女は、やっぱり美しくて。



 信じられないくらい、綺麗で。



 ルミアを見つめる視界が歪んで、先ほどまで止まっていた涙があふれ出す。



 我慢できずにボロボロと零れていく涙。



「なんでかな...ッ、何で...俺は、どこで間違えたんだよ...っ...教えてよ、ルミ...」



 シェイラの頬を伝った涙が、静かにルミアの頬を濡らした。








 シェイラは、ルミアを抱いたまま、片手を伸ばす。



「......ルミ...君は目にすることはできないだろうが、俺の最後の大仕事だ...せめての置き土産、俺達の最後を美しく彩ってくれ...」



 そう呟き、伸ばした手を地面につけた。



 すると、



 シェイラの体が淡く光り出す。



 それはシェイラが魔力を開放する合図。



 地面に付けた手から魔力がどんどん放出されていく。






 そして次の瞬間、一面に桃色の花びらが舞い散った。





 


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