櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ







 空っぽになってしまった腕の中



 温かさも冷たさも何もない。



 光の泡となって消えてしまったルミアの後を目で追いかける。








 シェイラにとって初めての友であり、唯一の理解者。



 そして



 初めて心から愛した人



 その彼女が今、亡くなった



 シェイラの手の中で。







 魔法使いは魔力を失って死ぬとき、その姿を残さない。



 それぞれの魔力の種類に応じて消える瞬間の情景は変わるが、中でも光の魔力保持者の最後が最も美しいとされている。



 光に包まれて消えていく様は、それこそ天使に誘われ天国に連れられて行くようで。



 辺りに舞い散るサクラの花びらも相まって、その光景は本当に美しかった。



 



(俺も......すぐに...)



 シェイラは涙を流しながら



 空へと手を伸ばした。



 



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