櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





 ◇





 ルミアの目の前に立つ三人の中からウィズが進み出る。



「知っているとは思うが、もう一度俺の方から試験の内容を一通り言っておきます」



 試験は三十分の試合形式。



 ルミアが一人で、試験官ジンノとアイゼンを同時に相手をする。
 


 ジンノは主に体術のみを使い、攻撃に魔法を使うことは禁じられている。



 それに対し、アイゼンは魔術のにでの攻撃に限定されている。



 そしてウィズは監察官として三人の戦いを客観的に分析するのだ。



 これは受験者から体術・魔術両方の実力を平等に引き出すためのシステムとなる。



「君もしくはこちらの二人が何らかの理由で動けなくなった場合、そこで試験を中断します
 それ以外の試合中の中断はありません」



 いいですね。



 ウィズの冷静な声が闘技場内に響いた。



 つまり、どれだけ酷いけがを負おうと、立ち上がる限り試合は終わらないと、そう言っているのだ。



「はい」



 辺りの空気が緊迫する。



 息ができなくなるほど冷たく張り詰める。



 ウィズが後ろに下がると同時に、ジンノとアイゼンが進み出た。



 対峙する三人。



 今、目の前にいるのは優しい兄であるジンノではない。



 幼いころから知っている酒好きで気の抜けたアイゼンでもない。



 この世界で絶対的な強さを誇る、フェルダンの特殊部隊、その隊長と副隊長だ。



 血も涙もない、『バケモノ』



 そして



 わたしも



 同じ、血に飢えた『バケモノ』──────







「では、試験を始める」



 感情の読み取れないウィズの声が闘技場にことさら強く鳴り響いた。







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