櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
皆の待つ王宮へ向かい歩みを進める。
王宮がある程度近くなると、ルミアたちがいる場所からシルベスターの執務室のバルコニーが見えた。
よく見ると、そこに人影が確認できる。
「ルミーーー!!!」
「シェイラ様ぁーーー!!」
「よかったぁ、ひっく、二人とも生きてたああ〜!!」
それは泣き叫ぶ騎士たち。
アポロやラウルやオーリングが、バルコニーから身を乗り出して手を振っている。
その奥には他のメンバーも。
シルベスターも、ジンノも、アイゼンも、ウィズも
ルミアの両親も
その中にアイルドールで分かれたはずのローグと、リュカ、イーリスの姿が見え、ルミアの作戦のすべてを皆に打ち明けてくれたのだろう事が分かり、ほっとした。
「みんなぁーー!!」
シェイラとともに大きく手を振る。
無事であると伝えるために、大きく、元気に。
それを見た彼らがバルコニーから急いで姿を消した。
大方、走ってこちらに向かっているのだろう。
「元気ですね、皆」
「ああ、本当に...」
「ねえ、シェイラさん」
ルミアは歩きながら話しかける
「私ね、この国が大好きです」
「...うん」
「この国の人も、仲間も、みーんな好き!」
「うん」
「だからやっぱり、私は死ねません」
そう言ったルミアの瞳は力強くて。
「もっと、もーっと強くなって、大切なもの全部守れるような騎士になります!」
はにかむ彼女はとても美しかった。
「ルミア」
「はい、...ん...」
完全に予測外の出来事だったのだろう。
ルミアの目が点になったような気がする。
でも、その様子はシェイラには分からない。想像だ。
なぜなら、
今、シェイラは、目をつむりルミアに口づけをしているから。
そっと、触れた唇を離す。
するとやっぱりルミアは、目が点...とまではいかないけど、心ここにあらずと言った感じでポカンとしていた。
シェイラはくすりと笑う。
「俺も好きなんだけど」
「え、...」
「大好きなんだけど」
その一言に、ボンっとルミアの顔が真っ赤に染まる。
「あいつらばっか見ないで、俺も見てよルミ」
「な...!!!!」
「アハハッ」
シェイラの笑い声が響く。
もうそこに、臆病だった弱い王子はいない。
サクラに彩られた王国は、
伝説の通り平和に包まれた日々を送ることになる。
皆が笑顔で、
皆が幸せな日々を。
そしてその国の王となる、サクラの王子は
ユキの騎士とともに生涯を過ごすのだ。
「好きだよ、ルミ」
真っ赤になったルミア見つめ、シェイラは言った。
真っ白で柔らかな雪が降り
風に乗って、サクラの花びらが舞う。
二人の物語(恋)は始まったばかり
―――――
*fin