櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ





それからというもの、試験が終了するギリギリまで、三人の攻防は一進一退を繰り返した。



アイゼンが何とか水球から抜け出したかと思えば



次はジンノが、光属性魔法で動きを封じられ、



間髪入れずルミアが鎖で締め上げられる。



瞬きをする間に次々と場面が変わっていく。



そのスピードもさながら、僅か三十分と言えど、よく体力が持つなと感心した。



しかし流石に、二人相手はキツかったのだろう。



終了直前にはルミアの息は上がり、動きも鈍くなっていた。



そして、そこを狙われた。



戦場では一瞬の気の緩みが、命取りになる。



まさにその言葉のごとく



ルミアの集中力がわずかに途切れたその瞬間に、ジンノの蹴りが脇腹を襲った。



特殊部隊の騎士たちは身体に魔力をのせて戦う。



普通の魔法使いはけして出来ない。



魔力を大幅に消費してしまうからだ。



魔法使いが魔法を使えなければ元も子もない。



特殊部隊など魔力を大量に保有する魔法使いにしかできない、荒業。



だがその効果は絶大で、ただの蹴りでも普通の人の何千倍もの力を発揮し、壁を抉ることもできる。



ルミア自身、女である以上男と力の差が生まれてしまうのは当然のことで、それを魔力の力で補っていた。



しかし、ジンノのひと蹴りは予想以上に重かった。



実の妹だからといって、容赦は一切ない。



蹴り飛ばされたルミアは壁にめり込み、あまりの衝撃に吐血する。



意識が朦朧とし、逃げるのが一瞬遅れた。



気づいた時には、槍状になった巨大な鉄の塊がルミアの体を貫いていた。



「......!!!」



観覧席からその一部始終を見ていた観客達は息を呑んだ。



口元を押さえ、顔を歪ませているものもいる。



そこまでする必要があるのか。



誰もがそう思ったが、それを口にできる者はもう居なかった。



これが戦場であったならば容赦は自らの命を失うことに等しい。



その上、ルミアの強さが二人の競争心を煽ったのだろう。



ルミアが動かなくなり、我に帰ったアイゼンが顔を真っ青にさせた。



ここまでするつもりはなかった。



そう顔に書いてあった。





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