櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
ガチャ───
「ルミーーー!!!」
「きゃっ、アポロ?」
闘技場の扉を開けた途端、中からアポロが叫びながら抱きついてきた。
思わず仰け反るルミアに、アポロは泣きそうな顔で詰め寄る。
「国外追放ってどういうこと!?本当なの!?
嘘だよね??出て行ったりしないよね!?」
それにはジンノも驚いたようで、目を丸くした。
「何だお前ら......もう知ってるのか」
アポロをルミアから引き剥がしながら、ジンノは呟く。
それを聞き、アポロは絶望的な顔を浮かべ魂が抜けたように肩を落とした。
よく見ると奥には特殊部隊全員が集まっており、皆が深刻そうな顔でこちらを見つめていた。
「ジンノ...」
珍しく真剣な表情で出迎える仲間達に、ジンノは笑う。
「どうした、お前ら。変な顔しやがって。いつものお前ららしくないぞ、馬鹿みたいに笑ってろよ。
隊長も酒飲めばいいじゃねえか、もう口煩く止める奴は居ねえんだから」
ジンノのそんな言葉も、今の彼らには響かない。
アポロに関しては半泣きだし、他の皆も暗い表情のままだ。
「ったく......大袈裟なんだよ、俺達が抜けるだけだ。死ぬわけでもねえのに、この世の終わりみたいな深刻そうな顔すんな」
「そうだよアポロ。ほら、泣かないで。ね?」
ルミアも、そんなに悲しむことはないのにと笑いながらアポロの涙を拭き取る。
しかし、なかなか暗い雰囲気は消えず、余計に悪化していくだけ。
(どうしよう、兄さん......)
(これじゃ、まともに話も出来ねえな......一旦、外出るか)
(うん。そっちの方がいいかも。皆にはちゃんとお別れしたいから)
ルミアとジンノは顔を合わせ、取り敢えずこの場から離れることにした。
「じゃあ、俺達は兵舎に置いてる荷物まとめるから、もう行くわ」
「三日間はここに居れるみたいだから、また来ますね」
そう言って、本人達よりも落ち込む八人の騎士を置いて、ルミア達は闘技場を後にした。