櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ









「何なのもうっ!腹立つ!!」


「ルミア落ち着け」


「兄さんのバカーー!!」



さて、状況を整理しよう。



ルミアは怒っていた。



時を遡ること数十分前。



王都ナイルに入った一行は、ジンノの一言で二手に分かれることになった。



『ノアとクロノワは俺と一緒に来い。ルミア達は適当に過ごしてろ。くれぐれも悪目立ちするなよ』



『ちょっと、兄さん!?』



『人探しに行くだけだ、すぐ戻る。団体行動しろよーー』



で、この状況なのである。



残されたルミア、リュカ、イーリスは行く当てがあるはずもなく、近くの喫茶店に取り敢えず入って少し早めの昼食をとっていた。



「本当むかつく!!何でもかんでも自己完結!こっちの事なんてなんにも考えてないんだから!自己中!
何が『団体行動しろよーー』よっ、団体行動出来てないのはどっち!?」



昼食を食べている間、ジンノの悪口がルミアの口から止めどなく出てくる出てくる。



「まあ確かに今回のは頂けないな。少しぐらい内容を教えてくれないと、万が一の際の対応のしようがない」



「あいつはいつも全てのことを自分一人でどうにか出来ると考えているからな」



やはりイーリス達にも不満は溜まっていたようで



「...やっぱり、兄さんのバカぁーーー!!!」



結果、こんなやり取りが昼食を食べ終わるまで延々と続いたのだった。






昼食を食べ終わった後、ルミア達は特にするとこもないので、王都ナイルの散策を開始した。



「可愛い街だねぇ」



「ホントだ。フェルダンの街並みはどちらかと言うと美しいが、ここは一つ一つの家が可愛らしい」



そんな言葉を交わしながらゆっくりと街を巡る。



その最中、3人はいくつかの噂を耳にした。



一つは、最近街のあちらこちらで頻繁に火災が発生しているということ。



もう一つはその火災が原因で『碧の部隊』と言う名の新たな特殊部隊が編成されたということ、だ。



加えて、奇妙な噂が一つ。



「また王子が宮殿を抜けだしたらしいぞ」


「またか...困った王子だなあ」


「一体これで何度目だ」



・・・・・・・・



どうやらこちらの王子はフェルダンの王子と違ってかなりアグレッシブらしい。



「...どこの国も苦労してるみたいだな」



どこか呆れたように呟くイーリスの言葉に、リュカとルミアは何度も頭を縦に振った。



3人はその後、気の向くままに王都を散策して回る。



まさかその最中に事件に巻き込まれるとも知らずに......



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