櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ




「誰かっ!誰かっ、助けてください!!
息子達がまだ中に!!」


「何だって!?だが、もう火の手が回って...」


「クソッ碧の部隊はまだか!!」



ごうごうと音を立てて燃え盛る建物の前に座り込む女性。



おそらくこの家の主なのだろう。



服には焦げあとが至るところに見受けられ、自身も灰をかぶって黒く汚れている。



子供たちを助けてくれと泣き叫ぶ彼女を支える街の者達が消火作業を行っているが、一向に炎の勢いが収まる気配はない。



碧の部隊もなかなかやって来ない。



きっといてもたったもいられなくなったのだろう。自分の愛しい子供達が苦しんでいるであろうその場所に向かって這いつくばるようにして進む。



「......ノエル......カーリー......待っててね
今...今行くからね」


「奥さんだめだよ!今行ったら死んじまう」


「離してっ!!子供たちのところに行かせてっ!!!」



そんなやりとり繰り返す二人の真上に、大きな影。建物の一部が崩れて倒れてきたのだ。



真っ赤な炎を帯びた太い柱状の物が二人の元に迫る。



「危ないっ逃げろーー!!」



周りの人達の叫びも虚しく、二人が見上げた時には頭上すぐ、目の前にそれはあった。



間に合わない。



誰もがそう諦めた。



しかし



ガンッ、という鈍い音がしただけで、何も落ちて来はしなかった。



二人が顔を上げたその先には、火の柱を背に庇うように立つ人影が。



勢いのままそれを薙ぎ払う人物の髪は、見たこともないほど真っ白で



表情こそ、マスクをしていて見えなかったが



それは間違いなくルミアだった。



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