櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ









「はーい他に怪我している人いますかー??」


「あ、すいません。この子も...」


「いいですよー。痛かったねーよく我慢したね。今からお姉さんが怪我を治す魔法、かけてあげるからね」



炎を受けてヤケドした腕にそっと触れ、瞼を閉じる。



触れたその手から柔らかな光が溢れ出し、瞬く間に怪我が癒えていく。



目をひらけば、もうそこにはヤケドの跡はない。



「わああ!お姉ちゃん、ありがとう!!」


「いいえ、どういたしまして」



痛みが消え、満面の笑みを浮かべる男の子を笑顔で見送り、ルミアは再びけが人の治療を再開する。





リュカが建物を燃やす炎を鎮火させてから、ルミアは怪我を負った街の人々の治療を始めた。



アポロ程ではないが、ルミアも十分な医療技術を持っている。



ルミアが次々と傷を癒している最中、隅で壁によりかかり休むリュカの元に、放火に巻き込まれた子供のうち長男のノエルがやってきた。



「お兄ちゃん」



そう呼びかけるが、リュカは少しだけ辺りを見回すだけ。こちらを見ようとしない。



「お兄ちゃんっ」


「あ?...ああ、あのガキか」



マントを引っ張ってもう一度声をかけると、ようやく気がついたのか、ノエルの方を見た。



「お兄ちゃん、助けてくれてどうもありがとう」



ノエルは小さな体でしっかりとお辞儀をする。



「.........別に礼を言われるような事はしていない」


「でも、お兄ちゃんが来てくれなかったら、俺も弟もきっと死んでた」


「......」



リュカが現場に駆け付けたとき、既に火の手は建物全体に及んでいた。



すぐさま中に入り、子供二人を見つけた時、ノエルはカーリーを庇うような格好で炎の中に座り込んでいた。



炎の中で、震えながらも必死に弟を守ろうとしていた兄の姿。



それが記憶の中の、ある人物と重なり、リュカは自然と体が動いたのを覚えている。



倒れてくる家材から体を張って二人を守った後、



『助けに来た。すぐにここを出る。二人とも息を止めておけ』



そう声をかけて二人を抱え込み、魔法で作り出した水のベールを纏わせながら炎の中を突っ切って窓から飛び出たのだった。


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