櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
「あれリュカ、帽子は?」
広場から離れていく最中、ルミアがリュカの変化にようやく気付く。
「...ああ、ガキにやった」
「そうなの?ふーん」
さして興味のなさそうに返事をするルミア。
しかしリュカは何となく申し訳なさそうで、
「...悪かったな、せっかくお前からもらったのに」
顔を伏せながらそう言った。
少し不安そうな、ルミアの顔を伺うような仕草にルミアは驚く。
「何そんなこと考えてたの。それは全く気にしてないけど、あげるなら新しいのが良かったんじゃない?あれ結構前から使ってるでしょう、今からでも遅くないんじゃ...」
そんなことをぶつぶつと呟きながら悶々と考え込んでいると、隣でくすっと笑う声がした。
「ちょっとイーリス、こっちが真剣に考えているのに何で笑うの」
「あははッごめんごめん、いやあ、ルミには分かんないよ。こう、男の友情みたいなこと」
「...何それ」
「ま、とりあえずルミは気にしなくていい話だよ」
不満そうに頬を膨らませるルミアを置いてイーリスは先へと進む。
「......またのけ者かっ」
「あははっほら置いてくよ!ルミッ、リュカッ」
「待てーー!!」
「......暗いから走るとコケるよ、ルミア」
「コケないわよ!!馬鹿にしないで!」
「......ハハッ」
すっかり暗くなった街道を、三人の騎士は走る走る
欠け始めた月は淡く輝きその姿を照らし、
三本の影を細く伸ばす
三騎士の長い夜は、まだ、続く───