櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
Ⅴ*叶わぬ想い
*
世の中には、『占星術師』と呼ばれる人々が少なからず存在する。
星を読み、未来や運命を占う者たちの事だ。
そして
その中でも力を持つ一族は、王国に専属の占星術師として雇われることがあった。
特に戦争に興じる王国や国防の力が弱い王国は、彼らの力ほど頼りになるものはないかった。
それはフェルダン王国も例外ではなく。
数百年も昔からフェルダンに仕え、その力を買われた占星術師がいたという───
*
「...お前が...」
そう呟くジンノの前には、深紅のベールに包まれた女性が一人。
大きな大きな水晶玉を前に、唯一ベールに隠されていない目元で、蝋燭の光をあびた瞳が光る。
薄暗く狭い部屋の中で、ジンノとその女性は二人きり。
彼は探していた。
28年前の王族分家⦅クリスタリア一族⦆暗殺事件
その際に姿を消した王家フェルダンに仕えていた占い師、その一族を。
「......お座りください」
占い師は目の前にポツンとある椅子をさす。
その言葉に従い、ジンノは優雅な動作でそれに腰を下ろした。
「.........ジンノ様...貴方がここに来ることは分かっていました」
蝋燭の光を帯びて、ゆらゆら揺らめく赤い瞳。
占い師のそれが、ジンノの目をとらえる。
心の中を奥底まで覗き込まれるような
不可思議で気味の悪い感覚に付き纏われる。
ここに長居はしたくないなと素直に思った。
「...人を、探してほしい」
ジンノはそう言うと占い師の前に一つの写真を差し出した。
それは、大人二人と子供二人が中央に寄り添っている
そう
家族写真だった―――