櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
「...っ!!...そんな事...兄さんに決められる筋合いないわ!!私はッ、兄さんに必要とされなくても、あの人に...シェイラさんに必要とされれば、シェイラさんの為に生きて死ぬことが出来ればそれだけでいいの!」
もちろん、嘘であり、本心でもある。
兄に必要とされなくてもいいわけない、そんなもの虚勢だ。自分がどれだけ兄に依存し、大切に思っているのかなど、ルミア自身が誰よりも一番よく知っている。
今ジンノが発した言葉に傷ついていないわけがない。
だが、シェイラの為に生きる。
そう決めたのだ。
たとえ、兄を裏切ろうと。
「兄さんに止められたって、私は自力でシェイラさんの所へ行く!!だって、私はシェイラさんをッ「黙れ!!!」」
ルミアの言葉が悲痛な叫びによって掻き消される。
ハッと我に返ると、目の前にいたのは、何故か泣きそうな表情で自分を見つめるジンノだった。
「シェイラ、シェイラ、シェイラッ...お前が考えているのはいつもあの男のばかり!!十年前も...帰ってきた今も、いつだって!!」
静かにジンノの頬を涙が伝う。
「お前のことを、誰よりも近くで、誰よりも強く思っていてもッ...俺はお前の『兄』でしかないのに!!」
固く握られた拳をベッドにたたきつける音に、ルミアの肩がびくりと跳ねる。
先程までと全く違うジンノの姿。こんなに辛そうに顔を歪める兄をルミアは知らない。
「...にいさ「その名で呼ぶな!!!」」
ジンノにかけた声は再び遮られて。
「...俺はッお前の『兄』なんかじゃない!!」
「え、」
その叫びにルミアは息をのんだ。