き み さ え い れ ば 。
限界
荻野さんがいそうな場所を思い付いて
エレベーターに駆け込んだ。
『はやく……はやく!』
最上階から下3階の空きフロア。
荻野さんが入社したころに見つけた、
ひとりで静かに休めるお気に入りの場所。
フロアについてエレベーターを出て
非常階段まで走った。
『荻野さん!』
角を曲がって見えたのは、
『や、うそ……荻野さん!?』
床に倒れている荻野さんだった。
『荻野さん!荻野さん!』
声をかけても、身体を揺らしても、
何の反応もなかった。
握った指先は冷たくて
唇の色も顔色も悪かった。
『嘘でしょ、嫌っ』
無我夢中だった。
頭では何も考えられなかったけど
身体は勝手に動いていた。
気付けば、病院のイスに座っていた。
*