き み さ え い れ ば 。

『荻野さん、荻野さんは?!』


ガタッ、とイスを揺らして立ち上がった。


「おいおい、落ち着いて。
ここは病院だよ。
高山くんが連絡してくれてから
すぐ救急車呼んで病院に来たんだ。
過労と睡眠不足だとさ。」

『あ……』


課長に促されて、イスに座り直した。


「思い出した?」

『はい……たぶん……』


無我夢中すぎて
あまり覚えていなかった。

課長によれば
泣きわめきながら電話していたそうだ。
課長にどこにいるか伝えたあと
救急車を呼んだのもわたしだったそうだ。

救急隊が来ても
荻野さんのそばを離れようとせず、
何を話しかけても答えなかったわたしは
一緒に病院に連れて来られた。


『覚えてないです……』

「それだけ必死だったんだろうな。」

『今、荻野さんは?』

「点滴中だ。
取りあえず、今夜だけ入院だとさ」



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