き み さ え い れ ば 。

荻野さんがひとりで仕事を抱えて
1週間が経ったころ。

資料が散らばった机
シワが目立つスーツ
本数の増えたタバコ

荻野さんは、明らかに疲れた顔をしていた。

誰が話しかけても
仕事中なのでとあしらわれ、
手伝いも断っている状態だった。

荻野さんに話しかけられない今、
話を聞けるのは課長しかいなかった。


「若いころに勤めていた会社で
俺の上司だったのが
颯大のお祖父さんなんだ。
よく家にも行かせてもらってたから
颯大のことは昔から知ってたよ」


荻野さんがこの会社に入ったのは
課長の薦めがあったからだった。



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