正義は誰が決める?
「お迎えに上がりました。」
約束の倉庫について暫く待っているといつもの運転手がやってきた。
今日は派手な高級車じゃなくてどこにでもある小型車だった。
この倉庫に呼ぶ時は目立たない車にするって約束守ってくれているんだ、と少し嬉しくなった。
運転手に家に、と伝えて仮眠をとった。
助手席に座る清も腕を組んで目をつぶっていた。
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「坊っちゃま、着きました。」
車を停車させた運転手の声に起こされ、開けられたドアを出た。
助手席に座る清の手をとって家の中に入る寸前、運転手に声を掛けた。
「もしも親父に何か言われたら俺んとこおいで」
決めゼリフのようにも聞こえるその言葉に、運転手は頬に一筋の涙を流して頭を下げた。
自分の孫とそう変わらないであろう俺に。何の戸惑いもなく、深々と。
逆に焦った俺があわあわして笑われる始末。もうヤダ、帰りたい。家の前だけど。
寝ぼけている清を家の中に入れて、俺も中に入った。
お辞儀をしていた運転手はもう帰っただろうか。ふと、そんな事を思った。帰ってると分かっているのに。
黒猫にメールした。
近々使用人が一人増える、と。
黒猫からの返事はなかったけどちゃんと見ていることは分かった。
既読の文字がついたからね。
その後、清と愛空にドレスを着せて家の前に止まっていた車に乗り込んだ。
「I am...Black Cat」
面を被った怪しげな運転手は何も言わずに車を走らせた。