正義は誰が決める?
「……」
「來夢」
「……畏まりました」
顔面蒼白になる小太りの男を無視して渋々ながら納得した來夢は手を離した。
仮面の下の冷たい瞳で小太りの男一瞥した來夢は緊急の為に離れた清の元へ急ぎ足で戻って行った。
失礼します、と声を掛けて。きちんとお辞儀を忘れずに。
清の元に戻った來夢は一緒に人の渦に消えていった。
それを見届けた俺は僅かながら震える愛空の肩を抱いて小太りの男の横を通って出口に向かった。
今日裏パーティーに参加したのは愛空の現在を報告する事で、その役目を果たした今、やる事が無くなってしまった。
目的がなくなった以上いる意味はないかな、とか思いながらふらふらと愛空を連れまわす。
あの小太りの男が寄ってくる様子はないし、他のパーティー参加者が近寄ってくる様子もない。
さっきの來夢の声が牽制程度にはなったらしい。
ほくほくとした気持ちのまま、少し離れた所で様子を見ていた俺の専属執事に合図を送って愛空だけ車に乗ってもらった。
俺はまだ少しやりたい事があるからね。