正義は誰が決める?
「ふふっ嘘ばっかりね、あなたは」
笑いながら、だけど、どこか威圧感のある女性が俺の隣に立った。
女性は葡萄色のワインを手にしていて、一つ一つの動作がとても優雅で色っぽくて。
クスッと笑った女性はドレスで強調された胸元を揺すって周りの視線を集めた。
そして、その隙に誰も見ていないのを確認して差し出されたUSBを受け取った。
「最近どう?」
「アメのドラマ出演が決まったわ」
「そう、頑張ってるようだね」
「ええ、とても」
綺麗に微笑んだ女性はどこか遠くを眺めていて。その視線の先に、俺はいない。
だからこそ、俺はこの人に任せられる。
俺に好意を持つ女を使ってもいいけど、どっぷりハマらせる必要があるし、そんな面倒臭いこと御免こうむる。
「あなたはどうなの?」
「さぁね」
「ふふっ嘘ばかりなのに嘘をつくのが下手ね」
「そう言うのは貴女だけだよ」
笑う女性に僕も笑った。
大抵の女はこれで落ちる。落ちなくても顔を赤らめる。
だけどね、ほら。
この人は絶対に顔を赤らめるなんてドジしない。
だって、この人が求める男は俺じゃないから。
この人は、俺が知る中で最強最悪のピエロだ。