正義は誰が決める?
新しい人
薄暗い路地裏にひっそり立つ一軒家のようなBAR。
表札とも思えるBARの看板には翡翠の二文字。
記憶の中のBARと目の前のBARに違和感を持ちはしたが、戸惑い無く開けた。
一見民家の中はBARのオーナーと、残り一口のカクテルを飲み干した翠希、他にも窓辺で空虚を見つめる女や翠希の情報目当てに来た男女が2,3人。
いらっしゃい、と妖艶な笑みを浮かべたオーナーに、書き出されたカクテルのエメラルドを注文して翠希の隣に座った。
エメラルドは情報屋に依頼する時の情報料と上限金を表すカクテル。
このBARと兄妹店にだけ使われる独特の方法。
一般人も飲みに来るBARのなかで裏世界の情報をペラペラ話すわけには行かない、と作られたルールがこの「段カクテル」と呼ばれる方法だった。
「早かったんだな、翠希」
「まぁ、屋上渡ってきたし。
そう言えば前の依頼の事だけど、いい知らせと悪い知らせ、どちらを先に聞きたい?」
分かっていながらも確認するように問いかける翠希に、ニヤリと笑った。