青の、果実。


幡山くんの切ない表情が
わたしに痛いほど伝わってくる。




でも、何を言われているのかわたしの頭では
すぐに理解できなかった。





「彼女がいる、いた、っていうのは
本当の話なんだ。一年前に、事故で亡くした。

もうちょうど一年も経とうとしていたのに
俺は全然現実を受け入れられなくて、

あの町に居るとかりんがまだ生きてんじゃないかって。
怖くなる。
だから俺は、逃げて来たんだ。」



「そんな...。」




普通は冗談だろうって誰だって思うのだろうけど
幡山くんの顔を見たら
そんなことも言えなくなる。




「最低なんだよ。俺。」





視線を外した幡山くんは今にも泣きそうで。
かりんさんの事を痛いほど想っているんだ、と伝わる。





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